手取川の次は吉田蔵!地元石川にこだわったサステナブルな日本酒

今回は石川県の名酒、吉田蔵についてご紹介します。

手取川の次は吉田蔵!地元石川にこだわったサステナブルな日本酒

石川県を代表する名酒蔵「吉田酒造店」

吉田酒造店は、石川県白山市に位置する老舗酒蔵店です。
2020年には創業150周年を迎え、白山市をはじめ石川県全体で広く長く愛される名酒を醸しています。
主要銘柄は手取川(てどりがわ)。吉田酒造店が位置する石川県白山市を通り、日本海へ流れ込む一級河川にちなんで名づけられました。

吉田酒造店が醸す日本酒には総じて手取川から取水したミネラル豊富な湧き水を使用。標高2,702 mを誇る白山に降り積もった雪が解け、湧き水となるまでおよそ100年。蔵にも水にも歴史ありの名酒蔵ですね。

吉田酒造店の大きな特徴は、時代に沿って柔軟に変化しつつも芯を曲げない「不易流行」の強さにあります。以下に吉田酒造店の見解を引用します。

世の中には絶対、変えてはならない物「不易」と変化に対応して変えていくべき物「流行」があります。両者をしっかりわきまえるという意味です。
引用元:吉田酒造店公式サイト(2022/11/23時点)

「流行」の部分を示す変化の代表例は、大手ファッションブランドUNITED ARROWSとのコラボ酒でしょう。

若い人にも日本酒を気軽に飲んでほしい、そのための変化を惜しまない姿勢が見て取れます。

「不易」すなわち変わらないものの代表例は、常に地元に根付いた酒造りを続けている点です。

地元の契約農家を重んじ、稲刈りには全社員が参加する。蔵付き酵母を育て、地元白山市を流れる手取川の伏流水で酒を醸す。

吉田酒造店の経営理念でもある「不易流行」は、酒蔵を形作る大事な柱だといえますね。

吉田蔵について

「吉田酒造店といえば、手取川」というイメージがあります。

吉田酒造店の主力銘柄は手取川(てどりがわ)です。北陸の玄関口である金沢駅にドドンと大きな看板が上がっているので、見たことがある人もいらっしゃるかもしれませんね。

創業当時から醸され続ける名酒で、石川県内のいろんな飲食店に常備されている有名な地酒です。

では、今回ご紹介する「吉田蔵」とは一体何なのか?主力銘柄の手取川とは何が違うのか?

順に説明してまいります。

吉田蔵はなぜできたのか

吉田蔵は「徹底的に地物にこだわった地酒原点回帰の一本」として作られました。

地酒と称して販売される日本酒は数多くありますが、使用している酒米や発酵に必要な酵母を見ると県外産のものが目立ちます。

昨今の酒造りは売れる酒造りに特化するあまり、システム化によるエネルギー消費、低コスト追求による酒米農家の衰退など深刻な問題を抱えているのも事実。

地元の酒米農家や霊峰白山から流れ出る湧き水、豊かな自然が、このままでは無くなってしまうかもしれない。

そこで吉田酒造店は、地物にこだわる一本の製作を決意。

酒米は100%地元の石川県白山市の契約農家から買い付けたものを使用し、酵母は蔵付きの金沢酵母を使用。

白山の恵みである伏流水を蔵人の熱意で締めあげたのが、吉田蔵シリーズです。

吉田蔵には、酒造りを通して持続可能な農業、水、地域づくりをつづけていきたいという願いが込められています。

主力銘柄「手取川」とこだわりの逸品「吉田蔵」の違い

今回ご紹介する吉田蔵と主力銘柄の手取川の違いは「100%地元産にこだわった原材料」にあります。

手取川は代々伝わる旨口芳醇の味わいを守るべく、全国から酒米や酵母をバランスよく配合。

地元白山の伏流水で醸すことで地酒の味わいと歴史を保つスタンダードな銘柄です。

対する吉田蔵は、あえて原材料を石川県産のみという制約を設けることで地酒の原点に立ち返るまったく新しい銘柄です。

吉田蔵独自のおいしさや歴史はもちろん、地元農家や環境を守り、次世代へとつなげていくという未来へのまなざしが込められています。

吉田蔵シリーズの味わい徹底レビュー!

100%地元石川県産にこだわった吉田蔵シリーズ。気になる味わいを見てみましょう。
吉田蔵のラインナップは3本。それぞれの名称と特定名称、精米歩合をまとめました。

商品名 特定名称 精米歩合
吉田蔵 純米大吟醸 純米大吟醸 50%
吉田蔵 純米吟醸 純米吟醸 60%
吉田蔵 純米 純米 65%

実際に飲んでみて感じた味わいは「スッキリめ」。あれ、こんなに美味しいんだ!と期待を上回るおいしさでした。

実は、原材料を地元産にこだわった日本酒を美味しく作るのは至難の業なんです。

地元産にこだわった地酒というのはかなりの数あるのですが、その多くはお世辞にもおいしいとは言えない代物であることがほとんど。

「でも地元産なんだから、おいしくいただかないと…」と、燗をつけたり料理を合わせたりしてなんとか飲み干した経験がある方も多いのではないでしょうか。

対する吉田蔵は地元産100%という制約の中に新たな可能性を見出し、主要銘柄の手取川に負けず劣らずのうまさを打ち出してきました。

さすが吉田酒造店、配合や仕込みにプロの技あり。飲み手としてはかなりの驚きを感じました。

純米は「本当に純米なのか?」と思うほどの甘みがフワリときます。これも吉田酒造店の蔵付き酵母の香りなんだ…とウットリすること間違いなし。

純米吟醸はさっぱり。包容力ある味わいは白山の伏流水が作り出したものでしょう。食中酒として料理を引き立てるメイン層といえますね。

純米大吟醸、ここにはメロンの甘みのあとしっかりした酸味がきます。世間で言う「酒米を削ってただただ甘い」大吟醸には出せない複雑な味わいです。

全体を通して言えば、吉田蔵は「成長途中の若さと冒険に満ちたあらたな酒」です。純米はこう、純米吟醸はこう、という固定概念を打ち破られる体験ができますよ。

吉田蔵はどこで飲める?酒販店で手に入る?

吉田蔵を探してみると分かるのですが、吉田蔵はどの酒販店にもありません。

吉田蔵シリーズは、飲食店の中でも特約店にしか卸されないんです。つまり、酒屋に並ぶことはまずありません。

吉田蔵を飲むのであれば、特約店の飲食店に行くのがおすすめ。3種類ある吉田蔵シリーズの飲み比べもできてリーズナブルなうえ、料理とのペアリングも楽しめます。

当店、創作バルannaはその特約店のひとつ。料理長は料理だけでなく日本酒にも通じており、入手が難しいと言われる幻のお酒十四代もお店に置いていることがあります(時期によります)。

日本酒バルannnaの料理長のこだわりや、おすすめメニューについてもっと知りたい方は創作バルannaの凄腕料理長「佐々野 健一」氏の料理に対する熱意と仕入れる絶品素材、日本酒をご覧ください。

まとめ

今回は、手取川という有名酒がありながらも、地元の農家や水、自然を大切にしたいという想いから原点回帰して産まれた銘柄「吉田蔵」について解説いたしました。

地元や米農家、水や環境を守りつつ未来へ向けたサステナブルな酒造りをつづける吉田酒造店。

地元白山の農家を盛り上げながら、地球の未来も考える自然主体の酒造りは、これからの地酒の在り方を変える大きなきっかけとなるかもしれません。

吉田蔵シリーズの未知の味わいが気になる方は、ぜひ特約点の飲食店に足を運んでみてくださいね。

著者のイメージ画像

白澤 慶

「創作バル&お結びさんどanna」のオーナー。「Lounge Kiyora」のオーナーでもある。