どこにも情報がない!? 一般消費者には販売しないレアな日本酒「雅山流」

今回は、山形県のレアな日本酒「雅山流(がさんりゅう)」についてご紹介したいと思います。
※画像の参照元:新藤酒造店

どこにも情報がない!? 一般消費者には販売しないレアな日本酒「雅山流」

山形の超こだわり酒蔵「新藤酒造店」

新藤酒造店は、明治3年創業の古き伝統が続く名酒蔵です。

主力銘柄は九朗座衛門(くろうざえもん)。創業当時から作り続け、地元山形では愛飲されている銘酒です。

新藤酒造店の驚くべきポイントは、ネット・書籍ともにほとんど情報がないということ。

大抵の酒蔵のホームページには、酒蔵の理念や作り手の想いなどをつづったページがありますが、新藤酒造店に関しては一切ないのです。

一風変わった印象を受ける新藤酒造店では、以下のようなこだわりを持っています。

  • 一般消費者への小売りはおこなわない
  • 酒蔵見学なし
  • 休業日は電話対応諸々全てお休み

「酒蔵ツーリズム」と銘打って観光産業に乗り出す最近の酒蔵とはまた違った方向性のようです。
それでは早速、謎多き酒蔵「新藤酒造店」の銘酒「雅山流」をチェックしていきましょう!

雅山流について

新藤酒造店のセカンドラベルと言えるのが「雅山流(がさんりゅう)」。

酒米は自社栽培の出羽燦々(でわさんさん)。山形県特産×自社栽培の酒米を使用。中には酵母まで山形県産のものを使った製品が目立ちます。

実のところ、全国で販売している地酒の多くは「仕込み水だけ地元で、あとは県外産の酒米と酵母なんです」というところが多いんです。

そんな中、酒米から仕込み水まで、その名の通り「100%地酒」をコンセプトに作られる雅山流はかなり貴重で手間がかかっているとわかりますね。

ところで、「雅山流」という名前、なんとなく知っているという方が多いのではないでしょうか?

日本酒をあまり好きではない方でも、どこかで名前を聞いたり、ラベルを見たりしたことがあるのではないでしょうか。

それほど名の知れた日本酒なのだから、昔からある銘酒なのかと思いきや、雅山流は、現蔵元杜氏の新藤雅信さんによる「完全オリジナルのお酒」で、令和元年に25周年を迎え、人間で言えばやっと青年期を終えようとしているころ。意外と若年選手なのに、この人気。理由が気になりますよね。

雅山流が出来た経緯について、詳しく説明していきます。

雅山流ができるまで

雅山流が生まれたきっかけは、現蔵元杜氏の新藤雅信さんによる「時代に流されないオンリーワンの酒造り」に由来します。

就任当時の主流と相反して作り上げたのは「フレッシュでクリーンなお酒」。飲み口サッパリ、後味スッキリのお酒です。

杜氏就任時、酒造レシピを変えようとしても反対されるだけだと思った雅信さんは、なんと誰にも言わずにレシピを変更し、自分が信じた酒造りを開始します。

雅山流の由来は、

「山は動かぬもの、川は流れるもの」

すべての物事に対して固執したり、囚われずにいようという思いから名づけられたそうです。

古き良き味わいはもちろん大切ですが、次の世代に引き継ぐには一度自分の中でお酒を解釈し、再構築していかなくてはならない。

「日本酒のおいしさ」という概念に囚われがちな日本酒業界の中では革新的な取り組みで、雅山流は一世を風靡する存在となりました。

主力銘柄「九郎左衛門」と隠し酒「雅山流」との違い

新藤酒造店の主力銘柄「九朗左衛門」と隠し酒的存在「雅山流」の違いは、伝統と革新というコンセプトにあります。

九朗左衛門は、創業時の明治3年より販売を続けてきており、長らく地元に愛されてきた銘酒です。
中には山形県産の酵母を使ったものも多くありますが、酒米は雄町や山田錦など有名どころを使用することも。吟醸、大吟醸なども作りますが、主な目的は「食事に合うお酒」。香りが高ぶりすぎない飲みやすさが特徴です。

対して雅山流は、自社田で栽培した出羽燦々縛り。100%山形県産の地酒を目指し、こだわりの一本を作り続けています。先に述べたように、雅山流はあいまいになってきた地酒の定義を考えたことから生まれました。酒米、酵母、仕込み水…全てにおいて山形県産のもので作った至高の地酒を作ってみたい。
まずは酒米から自社田で栽培し、一貫生産を心がけておられるそうです。

雅山流シリーズの味わい徹底レビュー!

雅山流シリーズの味わいをレビューしてみましょう!
雅山流シリーズについて、公式ホームページでラインナップは公開されていません。
よって、今回は雅山流シリーズのうち流通が確認できる下記3種類をご紹介いたします。

商品名 酒米 特定名称 精米歩合
別誂 雅山流 純米吟醸 六花 出羽の里 純米吟醸 60%
雅山流 大吟醸生詰「如月」 出羽燦々 大吟醸 50%
雅山流 純米大吟醸袋取り生詰原酒「極月」 出羽燦々 純米大吟醸 40%

精米歩合が60%の六花は、ご紹介する中ではスタンダードなラインです。
酒米を4割削る吟醸造りながら、水と酒米、米麹以外何も入れない純米酒というこだわり。出羽の里のうま味を味わうのであればこの一本で決まりでしょう。

続いて酒米を5割も削った如月、こちらは堂々の大吟醸で華やかな香りが持ち味です。
酒に一切火入れをしない「生詰」であることから、雅山流そのもののフレッシュな味わいを楽しめます。しぼりたて、そのままの味わいを楽しみたいワガママな方におすすめの一本です。

最後に紹介する極月は、その名の通り究極の贅沢を凝らした一本です。
精米歩合はなんと40%。これは酒米の6割を削り落とすことを意味しており、一本の酒造りに膨大な量の酒米と手間がかかっていることがわかります。
特定名称は堂々の大吟醸。これは、酒米を5割以上削った酒にしか与えられない極上の印なんです。
さらに着目すべきは「絞り方」。袋取りというのは、酒の絞り方の中でも最高級のやり方。麻袋の中に酒のもととなる「もろみ」を入れ、ポタポタと垂れる雫のみを集めて製品にします。酒米を6割も削り、そこからできたお酒の元を袋に詰め、自重でゆっくりゆっくりと抽出する…
この「袋づり」は中々お目にかかれる代物ではありません。
見かけたら試飲だけでもしてみてください。酒そのものの濃厚な味わいが舌にドン!とのっかる感じ。これは体験してみないとわからない衝撃です。

六花と如月は定番商品として通年流通しており、一部酒販店や特約店のレストランで見かけることもあるかもしれません。

極月含め、もし見かけたら一杯味わってみてほしい。そんな特別な日本酒です。

原酒とは?

原酒とは、日本酒のもととなる「もろみ」を絞った汁に水を一切くわえずに出荷されたもののことを指します。ここで驚きなのが、実は「原酒」と書かれていない日本酒はすべて醸造後に「割り水」といって水で薄められていたということ。

「そんなの損じゃないか!」と感じるかもしれませんが、実は割り水することで高いアルコール度数が低くなり、口当たりよく、飲みやすくなるというメリットがあるんです。原酒は高いアルコール度数と濃厚な口当たりで、酒そのもので味わったり、中華料理などの強い味の料理と合わせるのに向いています。

シチュエーションで飲みたいお酒を分けて選ぶと楽しいですよ。

「裏」雅山流

実は表立って「雅山流」として流通しているのは表。裏バージョンがあるということをご存じですか?

裏雅山流は、まったく自由な発想で醸造されたニュートラルなお酒。酒米、精米歩合、すべての縛りをあえて捨てて生まれたものなんです。きっかけは、「雅山流」を作っているとき、原材料や産地などに縛られていることに気づいたから。雅山流の由来である「山は動かぬもの、川は流れるもの」すべての物事に対して固執したり、囚われずにいようという思いに立ち返り、0から作り直した一本だそうです。

こちらは限られた酒販店からしか手に入らない貴重な一本。見かけたらぜひ飲んでみてくださいね。

雅山流はどこで飲める?酒販店で手に入る?

雅山流は、全て限定流通のお酒。

検索すれば楽天やヤフーショッピングにも並んでいますが、希望小売価格より高いか、入荷待ちの状態のものばかりです。

当店「創作バルanna」では、良心的料金で雅山流のほか幻の日本酒「十四代」など、当店の料理長「佐々野 健一」ルートで手に入る特別なお酒が置かれてます。その時々で手に入るお酒は異なりますので、何度足を運んでも色々なお酒を楽しめます!

まとめ

今回は山形県のこだわり酒蔵、新藤酒造店のセカンドラベルである雅山流をご紹介してきました。

時代や思い込みに流されず、自分がコレと思った一本で勝負していく。

山形の水、酒米、酵母を使った本物の地酒を作っていく。製作者の革新的な姿勢があらわれた一本になっています。

特に では、大吟醸、袋吊り、生酒、原酒という贅を尽くした一品。味わいが気になる方は、ぜひ特約飲食店に足を運んでみてくださいね。

参考元:
新藤酒造店公式サイト
SAKETIMES|哲学のこもった酒造り~日本酒を醸す全ての蔵をめぐる旅 山形編 vol.1~
世界文化社|山本洋子|ゼロからわかる!図解日本酒入門

著者のイメージ画像

白澤 慶

「創作バル&お結びさんどanna」のオーナー。「Lounge Kiyora」のオーナーでもある。