量産から高品質へ!手作り&山廃にこだわる日本酒「ほしいちフォレスト」

今回は長野県で手作りと山廃にこだわりぬかれた日本酒、「ほしいちフォレスト」についてご紹介します。

量産から高品質へ!手作り&山廃にこだわる日本酒「ほしいちフォレスト」

長野の老舗酒蔵:株式会社市野屋

株式会社市野屋は、創業から150年を超える長野の老舗酒蔵です。

代表銘柄は「ほしいち」。ほしいちとは、市野谷の創業当時に屋号として掲げた言葉が由来です。

市野屋では、ほしいちの由来を北アルプスの輝く星々にあやかった志だと示しています。
シンボルの「ほしいち」には、地域を照らす、一番に輝く星のような存在でありたいとの意味が込められています。

引用元:株式会社市野谷|ほしいちとは

実は、市野屋が位置する長野県には80件以上の酒蔵があり、日本では2番目に酒蔵の数が多い県です。
その中でも一番に輝く名酒蔵でありたい。そんな想いを込めたのが主要銘柄「ほしいち」なのでしょうか。

ほしいちフォレストについて

ほしいちフォレストは、市野屋の主要銘柄「ほしいち」からデビューした新銘柄のことです。
製造が開始されたのは2019年。2022年現在、製造開始からまだ3年ほどしか経っていない新銘柄です。このほしいちフォレストシリーズは、市野屋の主要銘柄「ほしいち」から見たセカンドラベルとして位置づけられています。

なぜ「ほしいち」とは銘柄を分けて製造しているのか?

「ほしいちフォレスト」と「ほしいち」の違いは何なのか?

詳しく見ていきます。

「ほしいちフォレスト」の誕生経緯

ほしいちフォレストができたのは、市野屋が製造方針を大きく変えたことがきっかけです。

市野屋では、2019年(令和元年)に杜氏(※)が入れ替わったことを境に酒造りへの姿勢を改めます。

※杜氏とは:酒づくりの職人の長。また、その職人
引用元:weblio辞典|杜氏

これまでの普通酒製造をメインするスタイルから、高品質な酒を出来ただけ出荷する少数精鋭方式に変更。

まず、市野屋で製造する日本酒において、機械化されていた以下の作業を手作業に戻します。

  • 洗米(酒米を洗う。水につける時間を秒単位で調節する。)
  • 麹造り(酒のもととなる蒸米に麹菌が生えた「麹」をつくる。うまみや甘味を作り出す)
  • 酒母工程(酒母とは、酵母を大量に培養したもの。酵母は糖を食べて、アルコールと炭酸ガスを生む)
  • 三段仕込み(酵母をどんどん増やすこと。ここでアルコール度数が上がる)

さらに、乾燥や洗浄に関しては設備投資を徹底。

換気システムや業務用空気清浄機を導入し、ひとつひとつの製造道具から瓶詰めしたお酒の保管までベストの状態になるように変えたのです。

数より品質に重きを置いたスタイルへの皮切りとして打ち出したのが、この「ほしいちフォレストシリーズ」なんですね。

主力銘柄「ほしいち」と新進気鋭のセカンドラベル「ほしいちフォレスト」の違い

主力銘柄「ほしいち」とセカンドラベル「ほしいちフォレスト」の違いは、原料とする酒米にあります。

酒米は、お酒の出来上がりの味を決める要素のひとつ。代表的なものには、雄町や五百万石などが挙げられます。

有名で味わいに定評のある酒米を使えば、安定した売り上げの日本酒を作れそうですよね。かくいう「ほしいち」も、岡山県産の雄町や福井県産の五百万石を用いています。

そこにあえて逆らったのが「ほしいちフォレスト」です。

ほしいちフォレストが用いる酒米は100%長野県産です。美山錦(みやまにしき)、よいごこちなど、あえてメジャーではない地元産の酒米を用います。

実は、長野県が酒米の製造をはじめたのは昭和初期までさかのぼります。

製造から数十年、2020年度には新たに「山恵錦」が品種登録されるなど長野県の酒米の勢いは留まることを知りません。

2022年現在、ほしいちフォレストで用いられている酒米は以下の3種類です。

  • 美山錦
  • ひとごこち
  • しらかば錦

それぞれの酒米を用いた商品の味わいは、次の項目で解説いたします。

ほしいちフォレストシリーズの味わい徹底レビュー!

それぞれの商品名と使用している酒米、特定名称、精米歩合をまとめました。

商品名 酒米 特定名称 精米歩合
ほしいちフォレスト
山廃仕込み特別純米原酒
美山錦
美山錦 特別純米 59%
ほしいちフォレスト
山廃仕込み特別純米原酒
ひとごこち
ひとごこち 特別純米 59%
ほしいちフォレスト
山廃仕込み特別純米原酒
​しらかば錦
しらかば錦 特別純米 59%

それぞれの商品名に共通する山廃とは、日本酒の製造方法のこと。昔ながらの製法で、乳酸の自然な発酵によりまろやかな仕上がりになると言われています。詳しくは後で解説する「山廃とは?」をご覧ください。

まず美山錦のものは、フレッシュでさわやか。食中酒にすれば、料理の味を邪魔せずに引き立ててくれる味わいです。

ひとごこちのものは、甘みが前面に出ています。原酒のよさが一番でたものともいえるでしょう。

原酒は日本酒を水で薄めないため、度数が高いうえに日本酒のうまみ・甘みをダイレクトに感じることができるんです。

しらかば錦のものは、甘味よりもうまみメイン。市場に流通している本数自体が少ないしらかば錦による日本酒の一例として貴重な一本です。

いずれの日本酒も長野県の酒造が長野県産の酒米を使って作った自信作。
水と米、米麹のみでつくる純米だから、酒米の味わいやクオリティを感じやすい一本に仕上がっています。

山廃とは?

山廃(やまはい)とは日本酒の酵母の昔ながらの製造方法を指す言葉です。

まず始めに、日本酒の酵母の作り方には以下3種類があります。

  • 生酛(きもと)造り:昔ながらの製法、一番面倒
  • 山廃(やまはい)造り:生酛の一部「山おろし」を廃止した少し楽になった製法、まあ面倒
  • 速醸(そくじょう)造り:科学的に作った乳酸菌で即時発行させる、早いし楽。多くの日本酒が採用。

日本酒の製造工程の1つ「酒母造り」にて、昔ながらのつくりを生酛(きもと)といいます。酒米を手で何度もかき混ぜる重労働(山おろし)で、乳酸のチカラで自然に発酵させていきます。

現代では、手間を省き、化学を用いて短時間で発酵させる速醸(そくじょう)がメイン。

このとても便利な「速醸」と昔ながらの「生酛」の真ん中に位置するのが「山廃」なんです。

由来は生酛造りで面倒だった「山」おろしを「廃」止した製法だから。

昔ながらの醸造方法を取り入れつつ、面倒は省いてそのままおいしさを残す。便利な作り方が山廃というわけです。

ほしいちフォレストはどこで飲める?酒販店で手に入る?

ほしいちフォレストは、全て限定流通のお酒。

検索すれば楽天やヤフーショッピングにも並んでいますが、希望小売価格より高いか、入荷待ちの状態のものばかりです。

お店で運よく巡り合えるかどうかです。関内にある創作バルannaは、そんなお店のひとつです。

まとめ

今回は、長野県に位置する市野屋が手掛けるほしいちフォレストについて解説いたしました。

50を超える酒蔵が位置する長野県でもひときわ輝く星でありたい、そんな思いを込めた「ほしいち」に新風を吹き込むのが「ほしいちフォレスト」です。

2020年の杜氏交代と共に、量より質、手作りと山廃造りという伝統製法によるおいしさを追求するようになります。

特に、ほしいちフォレストは長野県産の酒米に絞って製造することで、地元のおいしさを再発見できるようなラインナップになっていますね。

ほしいちフォレストシリーズの味わいが気になる方は、ぜひ特約飲食店に足を運んでみてくださいね。

参考元:
長野県酒造組合|蔵元紹介
長野県酒造組合|長野県の酒米と酵母と水と
世界文化社|山本洋子|ゼロからわかる!図解日本酒入門

著者のイメージ画像

白澤 慶

「創作バル&お結びさんどanna」のオーナー。「Lounge Kiyora」のオーナーでもある。