入手困難な日本酒「十四代」の徹底解説とお手頃価格で飲める店

画像引用:https://www.sakenomy.jp/

いよいよお待ちかね、幻の日本酒と呼ばれる代表格とも言える「十四代」の解説です。
「十四代」自体、仕入れるのが大変なお酒ですが、公式ホームページもなく、その情報も希少です。ここでは、どこにも載ってないような特別な情報を仕入れています。

入手困難な日本酒「十四代」の徹底解説とお手頃価格で飲める店

山形県の高木酒造について

十四代は山形県にある高木酒造が造っています。現在の社長が生み出した革命的な日本酒です。高木酒造は、リンクを張りたくても、ホームページがありません。強いて挙げれば、山形県酒造組合が高木酒造の紹介をしています。よって、情報まで希少なのです。

十四代はなぜ高い?十四代がスゴい3つの理由とあわせてご紹介!

日本酒「十四代」はとにかく高いことで有名です。
1本数万円もするのには、何か理由がありそうですよね。

特別な作り方をしているからでしょうか?もしくは、今流行りの「高価格路線」に便乗しているから?調査の結果、十四代は他の日本酒にはない「特別な3つの理由」があったことがわかりました。

店でもインターネットでも買えない?!独自のプレミアム感

十四代を定価で購入できる場所はほぼありません。
なぜならば、十四代は出荷本数が少なく市場に出回る数があまりないからです。

ひいきにしている飲食店や、長い付き合いのある特約店に配布するとほとんど在庫がないような状態です。

十四代を定価で購入するには、長い間通っている酒屋さんに融通してもらう、もしくは店独自のキャンペーン(抽選など)に応募するしかありません。
ネットで販売されているのは転売商品です。定価の数倍の価格を支払うことになる以上、手を出しにくいですよね。

十四代はこういった状況から独自のプレミアム感を持っているといえます。

「辛口は時代遅れ」日本酒界の常識を塗り替えた革命児

十四代は、日本酒において「芳醇旨口こそが美味しい」となっていた常識、概念を覆しました。独自の基準「端麗旨口」にて新風を巻き起こしたのです。いわば時代の風雲児です。

平成初期ごろ、世の中は「美味しい日本酒とは辛口である」と思い込んでいました。現在も名高い越乃寒梅をはじめ、数々の辛口日本酒が世に出回っていた時代です。

一方の十四代は「旨口」今で言う「甘口」を売りに高木酒造の第15代社長が勝負に出ます。理由は「自分が美味しいと思う酒であれば売れるはずだから」。結果、大成功をおさめます。

世間の常識を製品のクオリティで圧巻した十四代、その影響力の強さゆえに今もなお確固たる地位を築き上げているとわかりました。

「最高の米×こだわりの水×天才の努力」圧倒的なおいしさ

十四代のうまさは、米や水といった材料へのこだわりはもちろん、天才と謡われる現高木社長の努力の結晶といえます。

通常、酒造りに使用する酒米の品種は決まっています。毎年同じものを使うため、米の出来が悪ければ酒の出来も悪くなってしまいます。

一方、十四代は使用する酒米を固定していません。その年の米の出来具合を見て、高品質なものを使用します。

水は地元山形の伏流水を贅沢に使用。おいしい酒米をつくるおいしい水をそのまま酒造りに活かす、山形という芳醇な土地ならではの方法ですね。

中でも特筆すべきは現高木社長の並外れた努力です。

流行とは関係なく、自らの意思にもとづいた酒造り、製法の抜本的な見直し、全国区に挑むための東京の酒屋での売り込み…努力の賜物です。

さてみなさん、どうしてお酒の銘柄名が「十四代」なのに、生み出したのは15代目なの?と思ってますか?その点は後述します。

十四代はどこで飲めるの?

十四代を飲むなら飲食店がおすすめです。

入手困難な十四代に関しては、店舗用に流通しているものをお店で飲むのが最も確実、かつ高コストパフォーマンスといえるためです。

たいていの日本酒は、公式ホームページで買えたり、特約店に行けば手に入ったりするのですが、十四代に関してはどちらもありません(2022年9月時点)。

十四代を取り扱っているお店の中でもおすすめなのが、横浜の関内にある創作バルannaです。十四代の取扱店舗という意味でも貴重ですが、創作バルannaのスゴさはその創作料理にあります。

フォアグラから出る自然の油と茶碗蒸しのハーモニー、絶賛の声がやまない「絶品フォアグラ茶碗蒸し」、お出汁がじんわり広がる「出し巻き玉子」、カリッと香ばしい「味噌焼きおにぎり」…十四代のふくよかな味わいを広げてくれる創作バルannaの料理。

既に十四代を飲んでいる人も、料理とのペアリングで当たらな発見が得られるかもしれません。一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

十四代にはどれくらい種類があるの?

実は、十四代にどれくらいの種類があるのかは公表されていません。十四代製造元の高木酒造が正式なラインナップを公表していないためです。

ここでは、現在流通が確認できる33商品のうち特に人気なものを3つ取り上げてご紹介いたします。

商品名 特定名称 精米歩合
龍泉 純米大吟醸 35%
中取り純米 無濾過 特別純米 55%
秘伝玉返し 本丸 特別本醸造 55%

龍泉

龍泉のすごさは「米を極限まで削る」ことにあります。

精米歩合35%とは、米の65%を削りおとしたということ。こだわりぬいた米の6割を捨て、おいしさのみを追求した究極の一本です。雑味がなく、透き通った味わいが人気です。

中取り純米 無濾過

中取り純米 無濾過はストーリーのある一本です。
十四代の名を初めて背負い、高木社長自ら売り歩いた一本であるからです。
出来たものを一切加熱、加水、濾過しない本商品、十四代の歴史が詰まった濃厚な甘いテイストを楽しめます。

秘伝玉返し 本丸

秘伝玉返し 本丸は下級扱いされていた「本醸造」部類に大きな価値を見出し、今や十四代のスタンダードとなった一本です。

かつて本醸造とは下級の酒のイメージがあり、安さはマズい酒の象徴だとされていました。

そこで十四代は、2年目の醸造時にあえて「本醸造」部類で破格の一本2,000円代を打ち出します。業界初となる「安くてウマい」を実現したのです。

「いいお酒にはお金がかかる、だけど十四代の本醸造だけは違う」人々はすっかり秘伝玉返し 本丸のとりこになりました。

秘伝玉返し 本丸の登場を機に、各酒蔵の意識は「酒は崇高なのだから高く売る」という意識から、「いかに開発費を抑えておいしく作るか」にシフトしていきます。

酒造業界全体の意識を変えた、ターニングポイント的存在でもあるといえますね。十四代の中でもスタンダードな銘柄なので、まず初めに試していただきたい一本です。

十四代の歴史

十四代は激動の歴史を歩んでいます。

十四代が誕生したのは1994年。誕生時からさかのぼって、「え、こんなことがあったなんて!」というエピソードを4つまとめました。

商標登録名称「十四代」の誕生秘話

なぜ十四代は、生み出したのが15代目社長なのに「十四代」という名前なのでしょうか?

十四代は、前代の14代目社長である高木辰五郎氏の確固たる想いが引き継がれています。十四代の名付け親は諸説見ますが、商標登録履歴を確認すると前代、高木辰五郎氏によるものであるということで間違いなさそうです。

1975年に、高木辰五郎氏が出願人となる形で、「十四代」で商標登録されています。後述する通り、辰五郎氏は1993年に社長を退きますが、その後、1994年に高木酒造株式会社によるものとしてラベル表記が、1999年に「中取り 十四代」、2000年には縦書きを横書きに変えたものも加えて登録がされています。

となると、名前の理由は単純に前社長が十四代だからかと思えますが、実はそれだけではないのです。歴史を感じる名称にしようというのはあったそうですが、「十三代から十六代まで申請して、たまたま通ったのが十四代だけだった」そうです。

登録商標には数字など簡単な組み合わせは許可されないという決まりがあります。

(例)仮名文字の1字、数字、ありふれた輪郭(○、△、□等)、ローマ字(AからZ)の1字又は2字

引用:特許庁|出願しても登録にならない商標

よって、他の商標「十三代」「十五代」「十六代」は通らなかったと考えられています。

「十四代」だけが通った理由はわからないままですが、一説には十四代は「としよ」という人名として読めることから通ったのではないかと言われています。ただ、商標登録内容を見ると、読み方は「ジューヨンダイ」になってますが・・

「十四代」は当時弱冠25歳の現高木社長が酒造り未経験から作り上げ販路を拡大

前社長が「十四代」の商標を登録したときは、今の十四代とは別物で、古酒を対象にしたものだったと言われています。「古酒」とは、日本酒を熟成させたものです。製造した古酒のうち、美味しくできたものを「十四代」として販売していたと言われています。

十四代製造元の高木酒造は、もともと「朝日鷹」という日本酒を作る山形県内では有名な会社でした。1993年、現社長の高木顕統(あきつな)氏が25歳のとき、前社長の杜氏が高齢を理由に現社長に後を託します。現社長はその時、勉強のためということもあり、新宿の伊勢丹で酒売り場を担当していました。しかし、伊勢丹に入社2年目で、父親から後を継ぐようにと言われたのです。経験値0の状態で醸造を任された現社長は、自分の舌を信じて「おいしさとは」を追求し、「十四代」を完成させました。

清酒の醸造責任者である杜氏から引継ぎもそこそこに醸造。失敗しないだけでもすごいのに、市場が求めていた潜在ニーズの「芳醇旨口」を狙い撃ちできたことに驚きです。海外の販路を開拓するなど快進撃が続いています。

このように、十四代は酒造りの材料へのこだわりや製品への強い想いが生んだ努力をもとに、現在も高いクオリティを維持しているといえますね。

当時の流行「芳醇旨口」の正反対「芳醇旨口」で真っ向勝負の末大勝利

現社長が社長になったときは、「ウマい日本酒とは芳醇旨口である」とされていました。ところが、売れ筋の一本を試したところあまりおいしくありません。

世間の評判通りに作れば売れるはずのところを、高木氏は自分の舌を信じ、時勢にまったくそぐわない「芳醇旨口」な酒を作ります。

流行りや口コミに流されず、自分が「おいしい」と思う一本に近づける信念の強さが際立つエピソードですね。

あまりの人気に、供給に対して需要過多となり市場にでまわっていない「幻の酒」となる

現在、十四代を定価で手に入れる方法はほぼありません。供給<需要となり、個人で入手できるような余剰在庫がないためです。

製造元の高木酒造は公式ホームページを持たず、電話での販売もしていません。一般の消費者にとっては手に入れることがほぼ不可能、まさに「幻の酒」となっているのでした。

十四代の発売から現在30年弱経った今も人気の理由。それは奇抜な戦略以上に、製品の中に確かなおいしさがあるからです。

十四代の製造方法

これだけ人気の十四代、何か特別な製造方法をしているのか気になりますよね?

十四代の製造方法について、情報はまったくありません。「秘伝」としかいいようがないのです。

他の酒蔵では「仕込みを5段階にわけています!」「酒米は自社栽培です!」など、製造方法に関する何らかの情報があるのが普通です。

十四代の蔵元、高木酒造は自社から情報を開示することがほとんどありません。逆にいえば、限られた情報そのものが「幻の日本酒」感を演出しているといえますね。

まとめ

日本酒界隈でアツい一本「十四代」。ここまで、十四代が日本酒の常識をくつがえし、「幻の日本酒」と謡われる理由をまとめてきました。

十四代の人気の裏には、世間の流行りをものともせず、信じたものを作り続ける信念があります。

「十四代、飲んでみたいな…」と思った方、ぜひ取り扱いのある飲食店に足を運んでみてくださいね。横浜の関内にある創作バルannaは料理まで視覚的にも楽しめて絶品です。

著者のイメージ画像

白澤 慶

「創作バル&お結びさんどanna」のオーナー。「Lounge Kiyora」のオーナーでもある。